低侵襲心臓血管治療センター

血管の病気で受診される方へ

 当院心臓血管外科では、患者様の病気の状態を十分考慮した上で、その方に最適な治療方法を提案させていただきます。それぞれの方の生涯にわたる病気との関わり方を考え、可能な限り低侵襲で安心できる治療を行ってまいります。
 低侵襲心臓血管治療センターでは、大動脈疾患につきましてはステントグラフト治療、閉塞性動脈硬化症に対しましては経皮的動脈形成術を積極的に行っております。


病気について


大動脈瘤について

大動脈が拡大や突出した状態のことを「大動脈瘤」といいます。動脈硬化性がほとんどですが、外傷や感染でおこることもあります。その多くは無症状ですが、ひとたび破裂すると命に関わることがあります。破裂する危険性が高いと考えられるようであれば、手術を行うことになります。手術をするタイミングについては、大きさや形、その変化の程度などで検討します。
  • 「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」より改変し引用

    「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」より改変し引用


大動脈瘤のできる場所により、その呼び方も治療方法も変わってきます。手術の難易度も大きく異なります。

① 胸部大動脈瘤:胸にできる大動脈瘤
  • 「インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス」より改変し引用

    「インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス」より改変し引用


② 腹部大動脈瘤:腹にできる大動脈瘤

③ 胸腹部大動脈瘤:胸から腹までつながった大動脈瘤

 

大動脈解離について

大動脈の壁が2層に剥離し、大動脈の走行に沿ってその裂けた状態が広がった状態のことをいいます。発症すると突然に裂け広がった領域の激痛を認めます。薄く外膜だけになった壁に直接血圧がかかることで破裂してしまうことや解離の広がりで血流が悪くなってしまうことがあり、緊急手術が必要となることも多く見られます。
  • 朝倉書店「内科学」第12版より改変し引用

    朝倉書店「内科学」第12版より改変し引用


  • 「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」より引用

    「大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」より引用



解離の起きた場所により、危険性や治療方法が変わってきます。手術の難易度も大きく異なります。
 心臓近くの上行大動脈が解離しているStanfordA型では、手術を行わないと発症してから48時間以内の死亡率が約50%ほどになります。緊急手術を必要とする状態です。体外循環を使用して、人工血管置換術を行います。
 解離が上行大動脈にないStanfordB型では、手術をしない場合の死亡率が10%ほどです。破裂や血流障害がなければ、一旦手術をしないで状態をみます。ただ病気は刻々と進行することがあるため、変化の程度によっては手術を行うことがあります。

また発症してからの期間も重要となってきます。

急性期:発症後2週間以内、この中で発症48時間以内を超急性期
亜急性期:発症2週間を超えて3ヶ月以内
慢性期:発症して3ヶ月を超えた時期

とされています。急性期は状態が不安定で、破裂や血流障害となる危険性がある時期です。こうなってしまった時には緊急手術が必要となります。急性期を過ぎても、解離した大動脈が拡大して瘤化してくる場合には、手術をすることがあります。体外循環を使用して人工血管に取り替える手術を行うこともありますし、ステントグラフト治療を行うこともあります。


 

下肢閉塞性動脈硬化症について

 下肢への動脈が狭くなったり閉じてしまったりすることで、血液が足らなくなり症状が出る病気のことです。男性に多く、中高年以降に増加し、喫煙との関連が強く言われています。一定の距離をあるくと、足にだるさや痛み、こむらがえりなどが出るようになります。しかしその症状は、休むと良くなります。
 その症状は病気の進行程度によって大きく4つの段階に分けられます。

Fontaine分類
Ⅰ度しびれ、冷感
Ⅱ度歩くと痛くなる
Ⅲ度じっとしていても痛い
Ⅳ度足に傷ができ治りにくい
壊死

数字が大きくなると症状が悪くなります。Ⅲ度とⅣ度を「重症下肢虚血」といい、1年後には30%の人が下肢切断、25%の人が亡くなる、と言われています。

  • Norgen L et al.Eur J Vasc Endovasc Surg 33(1 Suppl). SI. 2007より改変し引用

    Norgen L et al.Eur J Vasc Endovasc Surg 33(1 Suppl). SI. 2007より改変し引用


薬物治療に加えてバルーンやステントなどの血管内治療あるいはバイパス手術を行うことで血流増加をはかることもあります。

 

手術について


ステントグラフト内挿術

 ステントグラフトとは、ステントという内腔を保持するための金属と人工血管を組み合わせた器具(ステントグラフト)のことです。このステントグラフトを用いて、カテーテル操作によって大動脈瘤を血管の内側から治療を行います。胸や腹を大きく切らず足の付け根からカテーテルを使って治療を行います。ご高齢であったり他の病気をお持ちであったりしても、手術のダメージを少なく治療することが可能です。
 当センターでは、大動脈瘤や大動脈解離に対して、積極的にステントグラフトで治療を行っております。緊急手術も行える体制を整えており、救命や治療成績向上に努めております。

胸部ステントグラフト内挿術

  • 「インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス」より改変し引用

    「インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラス」より改変し引用



腹部ステントグラフト内挿術



 現在国内で使用することのできる全てのステントグラフトの指導医が在籍する、群馬県唯一の病院です。患者様にとって最適なステントグラフトを選択することで、手術の後も安心して生活していただけるよう治療にあたっております。
 大動脈の病気がある場所や形によってはこの治療が不向きな方もいらっしゃいます。その場合には人工血管置換術や両方を組み合わせた手術を行うこともあります。

 この手術は、施行する施設や医師の基準が関連する学会で構成される日本ステントグラフト実施基準管理委員会によって厳格に決められております。当院は胸部・腹部のステントグラフト施行にあたりその審査に合格した施設であり、潤沢な経験を有する指導医・実施医が治療を行っております。


関連10 学会構成 日本ステントグラフト実機基準管理委員会ホームページ(http://stentgraft.jp


 

経皮的動脈形成術

 動脈の狭くなっている部分にカテーテルを挿入し、バルーンと呼ばれる風船のような器具で内側から広げるカテーテル治療のことです。ステントという金属の管を入れることもあります。またステントと人工血管との性質を併せ持ったステントグラフトというもので治療を行うこともあります。



当院は浅大腿動脈ステントグラフト実施基準管理委員会の審査基準に合格しており、当センターにはその実施医が常勤しております。

四学会構成 浅大腿動脈ステントグラフト実施基準管理委員会(https://sfasg.jp



狭い部分の場所や長さ、程度によってはこの治療が不向きな方もいらっしゃいます。その場合にはバイパス手術を行います。


 

術後フォローアップについて

 ステントグラフト治療はまだまだ新しい治療法であります。その手術を行うにあたり、施行する施設や医師の基準が関連する10の学会から構成される日本ステントグラフト実施基準管理委員会によって厳格に決められております。当院はその審査に合格した施設であり、潤沢な経験を有する指導医・実施医が治療を行っております。
 また委員会では手術後の状態も慎重に観察するよう勧告しており、定期的な評価を義務付けております。患者様に安心して手術後の生活も送っていただけるよう、当院でも年1回のCT検査を行わせていただいております。是非ともご協力のほどお願い申し上げます。

関連10 学会構成 日本ステントグラフト実機基準管理委員会ホームページ(http://stentgraft.jp


 

大動脈外来について

 当院心臓血管外科では、大動脈瘤や大動脈解離あるいは閉塞性動脈硬化症などといった血管の疾患に対して、専門外来として『大動脈外来』を開設しております。こういった病気でお悩みの方や治療をご希望の方、またご紹介いただく医療機関の皆さまにご活用していただければ幸いでございます。毎週火曜日の午前中に行っております。もしその曜日にご都合がつかないようでしても、心臓血管外科外来は毎日行っておりますので、そちらから受診していただくことも可能です。


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